今回は、長年高次脳機能障害支援に取り組んでいらっしゃる渡邉修医師に高次脳機能障害についての解説を、高次脳機能障害支援のネットワーク構築や事業所を立ち上げ機能訓練をされている茂木有希子さんに高次脳機能障害支援の現状と課題、展望のお話を伺うことができる贅沢な研修会でした。
まず渡邉医師が高次脳機能障害の概要を説明してくださいました。その中で、一番重要なことは「高次脳機能障害の診断を受ける」と仰っていました。(私もそう思います!)
なぜなら、診断を受けないと・・・
①本人、家族、周囲(学校、会社等)の 理解・心構え・行動変容ができない
→配慮もない、リハビリもない、ただ責められる日々。鬱や引きこもりの原因に
②各種手続き(障害者手帳、年金、労災等)ができない
→貰えるものももらえず、払わなくていいものを払い、金銭的にも苦しい
③社会資源(行政、保険、福祉施設等)が使えない
→自立訓練や就労移行支援などが使えず、相談するところもなく、非常に困る
全くもってその通り!私も脳炎後見逃されて、仕事、家族、お金、尊厳…13年もの間どれだけのものを失ってきたか…。
それなのに、埼玉県内に高次脳機能障害を診断してくれる医師が何人いるのか。
軽度な場合見逃されやすく、生きにくさだけが残ります。特にスポーツや虐待、転倒などは見逃されやすいようですので、おかしいと思ったら電話相談窓口などに相談することを強くオススメします。
あと、「突然の強い頭痛はくも膜下出血なので、躊躇せずにすぐ救急車!」という言葉が印象的でした。自分や家族に突然の強い頭痛が起きたら即119番通報します📞
他にも、リハビリの重要性をわかりやすく説明してくださったり、経済的制度や就労支援についての説明、支援者の対応についてお話を伺い、とても参考になりました。
続いて、茂木さんが事業所の紹介~どのような経緯で機能訓練事業を始めたのかをお話しくださいました。
茂木さんのお話しで一番心に残った言葉が「退院後の選択が人生を変える」です。例えば、退院後に受ける機能訓練だけでも次のような違いがあるようです。
障害者総合支援法における自立訓練(機能訓練)
日常生活動作の自立だけでなく、地域社会で自分らしく生きるための機能回復を目指す。
介護保険における機能訓練
日常生活動作(食事、排泄、入浴、移動、移乗等)の機能回復(自立)を目指す。
特に40歳~64歳の方は、障害福祉だけでなく介護保険も適用されます。
介護保険サービスに障害福祉サービスに相当するサービスがある場合は介護保険優先が基本となるため、出会うケアマネージャーさんや施設によって受けられる訓練が変わり、未来が変わっていくかもしれません。その結果…
タイプ① 介護保険優先になり働く意欲を失くし、高齢者と馴染む
タイプ② 引きこもる
タイプ③ 障害福祉サービスを上手に併用してもらい社会復帰を果たす
極端な例かもしれませんが、上記のようになる可能性があるかもしれません。なぜなら、縦割り行政が邪魔したり、介護保険サービスのみを提供する事業所で本人に最適なサービスではない可能性があるからです。
最適なサービスを提供できるよう、茂木さんは1つのフロアで障害福祉サービスも介護保険サービスも受けられる共生型デイサービスを立ち上げたそうです。
とはいえ、共生型デイサービスあまり多くありません。
全国で1,200件程です。(障害福祉サービス16万件、介護サービス30万件)
普及が進まない背景には制度や報酬面に問題があり事業所の収入が確保できない等、事業所が手を出しにくいさまざまな課題があるようです。
支援拠点である埼玉県リハビリテーションセンターが先導して、障害に悩む方が1人でも多く社会復帰を果たせるような環境作りを進めてくれることを切に願います。環境作りを進めるためには現場はもちろん行政も支えていただく必要がありますので、今回参加された支援者や政治家の方が中心になって進めていただければと思います。私も本日伺ったお話をヒントに、春日部市で1人でも多くの高次脳機能障害で悩んでいる方の助けになれるよう活動していきたいです。
渡邉 修 さん
東京慈恵会医科大学附属第三病院
リハビリテーション科 教授
茂木 有希子 さん
株式会社ハート&アート 代表取締役