今回は、先日のブログで紹介した、長年高次脳機能障害支援に取り組んでいらっしゃる渡邉修医師が「一番重要なことは高次脳機能障害の診断を受けること」と仰っていた件にフォーカスしてみました。
日本では以下の通り高次脳機能障害であると判断するための基準が定められています。
高次脳機能障害診断基準ガイドラインより(国立障害リハビリテーションセンター)
Ⅰ.主要症状等の確認方法について国立障害リハビリテーションセンターに問い合わせたところ「病歴と診察が基本となり、医師が診断をする上で必要と判断した場合に、神経心理学的検査を実施し、判断の参考にすることができるという整理です。」と回答がありました。
また、積極的に「あなたは障害です」と診断する医師は少なく、患者から困っていることを相談した上で必要と判断した場合に診断する医師が多いようです。(患者から相談しても「そういうものだよ」と何もしない医師が一番多い気がしますが…)
高次脳機能障害の症状の1つに病識欠落があるので本人からの相談は望めないし、軽度であれば検査をしないので医師も気付かない。すると・・・
→職場で異変に気付かれるが、理由がわからないので本人が責められる
→うまくいかないと思うも誰にも相談しない
→退職に追い込まれる
→転職しても同様のことが続く
→適応障害やうつ病、アル中など二次障害になる
→家族や友人が疲弊して離れていく
→診断を受けられないので適切な支援がなく、お金も仕事も人もなくなる・・・
このループが待っています。
当時者である主人に聞きましたが「最近うまくいかない」とは思っていたけど、そこまでではないと思って家族や友人が居なくなり仕事を失っても誰にも相談しなかったと言っていました。これが現実なんです。
ちなみに軽度といっても健常者とは明らかに違いますよ。軽度と思われる主人でさえ全てを失いました。実際に仕事も生活も共にしたからわかります。軽度だから支援が必要ないということではないのです。
また、リハビリも発症後1年以内が効果的なのに診断されなければリハビリも受けられないんです。
医師が積極的に診断をしない理由に、本人が傷ついてしまうからというものがあります。それも分かりますが、高次脳機能障害については病識欠落ということもあり、そのような気を遣われると非常に困ります。せめて脳に傷がついた場合は、高次脳機能障害の診断をマスト項目にして欲しいです。
こんな声をあげたとしても医師会は変わらないでしょうから、患者や家族が知識を持って、脳卒中、頭部外傷、脳炎、脳症等、脳にダメージがあった場合は高次脳機能障害の可能性を医師に相談するしかありません。
脳卒中、頭部外傷、交通事故、脳炎、脳症・・・いつ誰がなってもおかしくありません。大切な人を守るためにも、ぜひ、高次脳機能障害を皆さんに知っていただきたいと思います。